がん患者における、新型コロナウイルス (Covid-19)ワクチン接種について
すべてのがん患者は、可能な限り、治療段階に関わらず新型コロナウイルスワクチンの接種を受けることが推奨されます。
がん患者における新型コロナウイルスワクチン接種の時期と優先順に関しては、国家機関や国際機関から推奨事項が示されています。 (接種時期については、主治医へご相談ください)
- 化学療法を必要とするがん患者や血液悪性腫瘍患者、もしくは、がんの診断を受けてから5年未満の患者は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化する危険があるので、ワクチン接種が優先されると思われます。優先接種の対象に関しては医師または専門の看護師に尋ねてください。
- ワクチン接種は、特定のがん治療(放射線療法、免疫療法、化学療法などの抗がん剤)に関係なく、造血幹細胞移植を受けた患者を含め、がん患者全員に勧められます。ワクチン接種をしてもがん治療を進めることは可能であり、治療を変更したり遅らせたりする必要はありません。
- 可能なら、がん治療開始前のワクチン接種を推奨します。すでに治療を受けている場合、白血球数が正常範囲の時期に接種を受けるのが望ましいです。
- 殺細胞性抗がん剤や免疫療法を受けている場合、例えば3週毎投与の治療法では、投与後2週間で次回投与1週間前の時期に接種を受けると良いでしょう。あるいは、ワクチン接種は抗がん剤の投与と投与の間で受け、貧血が最も強く起こる時期(通常は治療後7-14日で最低値となりますが、治療法によって異なります)を避けることが推奨されます。ワクチン接種の副反応が予想される場合は、抗がん治療を避けるのが一般的です。
- 抗がん治療の終了間近の場合は、治療終了後で貧血が最も強く起こる時期を過ぎてから初回ワクチン接種を受けると良いでしょう。ワクチン接種を受ける時期については、主治医とよくご相談下さい。
- 手術前の場合は、最低でも手術1週間前にはワクチン接種を受けることが推奨されます。手術後の場合は白血球数が適正値であればワクチン接種は可能です。主治医とよくご相談下さい。
- 造血幹細胞移植を受けた人で移植片対宿主病がない場合、また、B細胞枯渇療法などの治療を受けた方は、治療数ヶ月後にワクチン接種が可能です。腫瘍学会によって推奨事項は異なっていますので、主治医とご相談下さい。
上記の治療によって免疫系が弱まり、ワクチンを接種後に十分な予防効果が得られない可能性があります。主治医とよく相談し、彼らのアドバイスに従ってください。
- 新型コロナウイルス感染の既往があってもワクチン接種は可能です。初回のワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染した場合でも、2回目のワクチン投与は可能です。接種前に新型コロナウイルス感染の検査を受ける必要はありません。新型コロナウイルス感染の既往があってもワクチン接種により免疫応答が強化され予防効果が高まります。
新型コロナウイルスに感染したことがあっても、症状が無かったり、軽かったりした場合には、十分な抗体が産生されていない可能性があります。AIOM, ÇOMÜ, CIPOMO, HESMOなどの学会は、感染後1ヶ月、もしくは回復後15日頃にワクチン接種を受けるよう勧めています。
ASCO、CDCは、初回ワクチン接種後に感染があった場合は2回目の接種は初回接種後6週(42日)以内に受けるよう勧めています。
新型コロナウイルスに感染して受動抗体療法(モノクローナル抗体や回復期血漿治療)を受けた患者さんは、ワクチン接種まで最低90日は空けるようにして下さい。
ワクチン接種の禁忌
予防接種の禁忌は、一般の人々に適用されるものと同じです。
- 新型コロナウイルスワクチンに含まれる成分に即時型アレルギー歴のある方は禁忌とされます。
- 他疾患のワクチン接種や薬物注射などで即時型アレルギーを起こしたことのある方は主治医に相談して下さい。
初回のワクチン接種でアレルギー反応を起こした方は2回目のワクチン接種は中止されることになると思われますが、国によって方針が異なりますので、主治医とご相談ください。
がん患者における新型コロナウイルスワクチンの有効性や効果持続期間について、あるいはがん治療との相互作用についての知見は限られており、がん患者に対するワクチン接種の指針は各国で実際に接種して得られた結果から導き出されます。全ての情報は経験から得られるものですので、新型コロナウイルス感染症のパンデミックはまだ続くと予想されることから、知見は時間の経過と共に蓄積していくことでしょう。
AIOM: Associazione Italiana di Oncologia Medica
ÇOMÜ: Eğitimde ve Bilimde Dünya Üniversitesi
CIPOMO: Il Collegio Italiano dei Primari Oncologi Medici Ospedalieri
HESMO: Hellenic Society of Medical Oncology
ASCO: American Society of Clinical Oncology
CDC: Centers for Disease Control and Prevention